ろんだん佐賀

人生100年時代の教育

2020.01.26

多様な価値観、次世代に

「人生100年時代」という言葉を聞くに久しい。2019年、日本の100歳以上の高齢者人口は、7万人を初めて突破した。1980年の時点では、968名であり、この39年の間に約77倍まで増えた計算になる。このまま医療が発達し、人間の平均寿命が延びつつければ、いずれ100歳まで生きることが当たり前の時代となる。そこには、これまでの「人生80年時代」では予測することができない、社会の在り方、各個人のライフスタイルの変化が生じる。これまで「当たり前」であった、入学、卒業、就職、退職、静かな老後というライプランが、成り立たなくなるのである。加えて、AI、IoT 技術、ビックデータの活用という、いわゆる第4次産業革命の進展により、様々な知識や情報が共有され、全ての人とモノがつながる時代となる。この社会システムの変化は既に始まっており、ここ10年での流行の入れ替わりはめまぐるしく、人々の価値観も特性も大きく変わった。

私は、小児科医として、大学教員として、一人の親として、若い世代を次の社会に送り出す立場に不安を感じている。人は、自身の知識や経験、その時の常識で子供や後輩の教育・育成をする。過去に成功体験があるとさらに厄介で、違う世界を中々想像できず、自身の物差し、価値観が絶対であると信じて疑わない「教え」となってしまう。未来は、その価値観では図ることができない世になっているかもしれないのに。少子高齢化で人材が減る傾向にある中、正解のない社会の中核を担うことになる若い世代に我々現役世代は何を伝えることができるのか。教育の役割は重大である。そして、その教育というのは、教師や保護者、人材育成担当者のみで行うものではない。多様な価値観を次世代に伝えるためにも、社会全体で捉えていく課題なのである。

人口減少、超少子高齢化、予測不可能な時代…。未来を語るときに必ずやでるこれらのワードは、ついネガティブなトーンで語られがちであるが、決してそうではない。少子化だからこそ人材の教育に多くのコストをかけることが社会善となり社会正義となっていくからである。昨年より始まった幼児教育の無償化はその最たるものだ。さらには、「生涯学習」「リカレント教育」という言葉に代表されるように、若者のみならず、現役世代もその恩恵を受けている。「人生100年時代」を提唱したリンダ・グラットンは著書の中で、長寿社会を生き抜くためには、財産やお金とは異なる「無形の資産」が重要であり、その1つの要素に「変身する力」と説いた。予測不可能な時代だからこそ、生涯学び続け、自身の価値観や常識を常にアップデートできる環境の実現、個人の柔軟性が重要となってきているのだと思う。

私は「教育」が好きである。若者を、よりよい状態の身体と精神で(欲を言えば1つでも多くの強みを持たせて)社会に送り出すために環境を整えることは、ゆくゆくは健全な社会へとつながる。こんなにやりがいのある素晴らしい投資はない。

1年間を通して、僭越ながら、ダイバーシティや女性活躍、働き方改革、小児医療等、未来社会を考える補助輪となる項目について、知見を示していきたい。

佐賀新聞 2020年1月26日付 掲載

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