ろんだん佐賀

未来のリケジョを育てるために

2020.07.13

社会の要請 追い風に

6月30日付の佐賀新聞紙面に、本学が取り組んでいる「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を取り上げていただいた。多くの方にお声掛けいただき、新聞というメディアの底力を肌で感じている。これは、文科省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が行う次世代育成事業の一つであり、大学や高専が中心となって、専門講義や実験会、理系学生との交流を行い、女子中高生に科学への興味関心を抱いてもらうことを目的としている。事業に参画してちょうど4年目。時折、「なぜ女子だけ?」という愚直な質問を受ける。私は、ここをどう理解してもらうかが自分の役割だと認識しており、これまでずっとその「模範解答」を探し続けてきた。
さまざまな分野での女性の社会進出が期待されている中で、科学技術を専門とする日本の女性は世界的に見て著しく少ない。その課題は現役だけではなく次世代から始まっている。OECD(経済協力開発機構)が行う、15歳の生徒を対象とした生徒の学習到達度調査(PISA)では、日本の成績は男女ともに科学と数学分野で上位を保っているが、同じ成績の生徒のうち、将来科学者や技術者として働くことを想像しているのは、男子が10人に1人、女子は30人に1人と大きな差がみられている。この差は国際的にみても日本に特徴的な傾向だ。事実、教育現場でも、高校の理系クラスは男子が多いし大学の理工系学部に進学する女子は少ない。
理系への興味や適性に男女差がみられるのは、男女が持つ先天的な脳の特性によるものだろうか? この疑問についてはここでは掘り下げないでおくが、いずれにしても、後天的な「社会的要因」のほうが大きいのは明らかだ。地方大学の門を叩(たた)いた女子学生の中には「親から地元から出るなと言われてこの大学に来た」「先生に女は資格を持っておいたほうがいいといわれたので、この学科を選んだ」という子は多い。中高生の中には「勉強は好きだが大学は無理して行かなくていいといわれている」という女子もいる。さらには、個人的エピソードで恐縮だが、幼稚園生の息子が「あの子は女の子なのに、ロボットが好きで珍しい」と友達を紹介してきたことがあった。ジェンダーのステレオタイプは、至る所に潜んでおり、既に幼児期から備わっているようだ。
人はとても繊細に環境に影響される。女子中高生が科学に関心を持った時に、それを育むのか、無意識のうちに翼を折ってしまうのかは、保護者や先生、友人といった周囲の人間にかかっている。先人が少ない科学分野の職場に大切な子どもを送り出すことはできないと不安を抱くことはもっともだが、そんな人にこそぜひ見てほしい。理系分野の大学生や研究者は、とても生き生きと学び、働いている。そして、リケジョの比率が少なく社会に求められている今こそ、社会の要請を自分の追い風と捉えてほしい。
やりたいことは知っていることからしか生まれない。未来を生きる子どもたちに、一つでも多くの選択肢を提示して、「自分にもできるかな?」と考えてもらいたい。もちろん男子生徒だって同じである。
新型コロナウイルスで制限される中、現在、企画を思案中だ。本事業を通じて、文系も理系も進路未定の生徒も関係なく、たくさんの中高生に会えるのを楽しみにしている。

 

佐賀新聞 2020年7月12日付 掲載

>>コラム一覧へ戻る