第2回佐賀大学黒田チカ記念賞の受賞者が決定しました(Click)。
表彰式は、2025年3月3日(月)13:30~14:00@理工学部6号館1F都市工学大講義室(本庄キャンパス)で開催します。

1. 設立趣旨
黒田チカ博士は、日本で最初の女子大学生の一人で、化学分野の最初の女性博士として知られています。佐賀県佐賀郡松原で誕生した黒田チカ博士は、佐賀県師範学校女子部(佐賀大学教育学部の前身)を卒業し、東京の女子高等師範学校、東北帝国大学理科大学へ進学しました。当時は、女性が高等教育を受けること、研究職に就くことが当たり前ではなかった中、女性科学者の先駆けとして、時代を切り拓いてきた1人です。

 

黒田チカ博士のこれまでの功績を称え、また博士が佐賀大学の前身校を卒業されていることをご縁に、令和5年(2023年)に佐賀大学学長賞の一つとしてお名前を冠した「佐賀大学黒田チカ記念賞」を創設しました。

 

本記念賞は、優れた業績を上げた女性研究者及びダイバーシティ研究環境形成に貢献した教職員等を表彰するもので、「女性研究者部門」「女性研究者支援部門」に分けて実施します。本記念賞によって、研究意欲の向上及び後進の育成に資すること並びに本学の構成員一人ひとりが自らの能力を最大限に発揮できるダイバーシティ環境への理解及び取組を推進することを目指しています。

 

※黒田チカ博士を称えた賞は、博士の母校である東北大学とお茶の水女子大学にも存在します。東北大学大学院理学研究科「黒田チカ賞」(1999年設立)、お茶の水女子大学賞「黒田チカ賞」(2015年設立)。また、2024年には博士とゆかりがある福井大学においても賞が創設されました。福井大学「女性研究者学術研究奨励賞(黒田チカ賞)」(2024年設立)。

 

昭和25年頃 黒田チカ博士
(お茶の水女子大学所蔵)

佐賀の偉人として設置された黒田チカ博士の等身大モニュメント(佐賀市唐人町2丁目)

 

2.黒田チカ博士について
黒田チカ博士は、現在の佐賀市ご出身で、帝国大学に入学した最初の女性であり、化学の分野で顕著な業績を残した研究者です。特に天然色素(紫根、紅花、ウニなど)の研究に取り組み、それらの分子構造を決定しました。

日本では、女性で二番目となる理学博士となり、数々の学術賞を受賞されています。教育者としては、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)において、30年以上に渡り教授として、後進の指導・育成を行いました。また、日本婦人科学者の会(現・日本女性科学者の会)の設立に携わり、貢献してきました。

座右の銘は、「物に親しむ、物が全てを教えてくれる」。

 

【略歴】

1884年(明治17年)3月24日佐賀県佐賀郡松原に誕生

1901年(明治34年)佐賀県師範学校女子部卒業

1906年(明治39年)女子高等師範学校理科卒業。福井県師範学校女子部教員に就任。

1909年(明治42年)女子高等師範学校研究科修了。東京女子高等師範学校助教授就任。

1916年(大正5年)東北帝国大学理科大学化学科卒業

1918年(大正7年)東京女子高等師範学校教授就任

1924年(大正13年)理化学研究所嘱託となり、紅花の色素の構造研究を開始

1929年(昭和4年)理学博士。学位論文『紅花の色素カーサミンの構造決定』

1949年(昭和24年)新設されたお茶の水女子大学にて教授就任

1952年(昭和27年)お茶の水女子大学退官。同大学名誉教授。

1959年(昭和34年)天然色素の有機化学的研究により、紫綬褒章受賞。

1965年(昭和40年)勲三等宝冠章受賞。

1968年(昭和43年)11月8日 84歳で逝去。※佐賀市伊勢町大運寺に墓石あり

 

 

 

佐賀県師範学校女子部を卒業し、小学校教員になったころ(17歳)(東北大学史料館所蔵)

理化学研究所で紅花の研究を始めたころ(40歳)
(お茶の水女子大学所蔵)

昭和17年頃 東京女子高等師範学校の講義での演示実験(58歳) (お茶の水女子大学所蔵)

 

 

3.黒田チカ博士を支えた周囲の人々
黒田チカ博士が研究の道にまい進できたのは、博士の才能や地道な努力があったのはもちろんですが、周囲の理解やサポートが常にあったからだとも言えます。博士の手記(婦人之友「化學の道に生きて」)には、進学や就職の際に様々な人物の影響と支援があったことが記載されています。博士の両親をはじめ、師範学校の教師、就職先の上司、進学先の恩師などが、彼女の才能を認め、次のステップへ後押しし、支えています。

現在、日本における女性研究者数の少なさが問題となっていますが、女性研究者が活躍する上で、こうした協力者・支援者の存在が欠かせないといえるでしょう。

 

4.表彰規定等
・佐賀大学黒田チカ記念賞表彰規程(佐賀大学規定集)

・佐賀大学黒田チカ記念賞表彰実施内規(佐賀大学規定集)

・令和6年度募集要項(PDF 365KB) ※学内専用

・【別紙様式1】推薦調書(女性研究者部門) (Word 28KB) ※学内専用

・【別紙様式2】推薦調書(女性研究者支援部門)(Word 25KB) ※学内専用


 

 

 

 

 

 

受賞者一覧

令和6年度
部門
受賞者 所属・職名
女性研究者部門 坂本 麻衣子 医学部 准教授
辻田 有紀 農学部 教授
女性研究者支援部門 該当者なし
令和5年度(表彰式の様子)
部門 受賞者 所属・職名
女性研究者部門 原 めぐみ 医学部 准教授
女性研究者支援部門

佐藤 和也

橘 基

理工学部 教授
理工学部 教授
坂口 幸一 理工学部 准教授

 

 

 参考・引用文献

  • お茶の水女子大学ジェンダー研究センター, 2000, 黒田チカ年譜(黒田チ力資料目録)
  • 黒田 光太郎, 2018, 科学研究費助成事業研究成果報告書「研究課題名:黒田チカの生涯ー最初の女子学生の教育、研究、人間、社会ー」
  • 宮島醤油 「「去華就実」と郷土の先覚者たち」 第29回黒田チカ
    (上)https://www.miyajima-soy.co.jp/archives/column/kyoka29
    (下)https://www.miyajima-soy.co.jp/archives/column/kyoka30
  • 佐賀大学教育学部同窓会有朋会130年記念誌編集委員会, 2018, 有朋会130年記念誌「創造と継承」
  • 黒田チカ, 1957,「化學の道に生きて」, 婦人之友 3月号・4月号

掲載写真については、所蔵先より資料利用許可を得ている。お茶の水女子大学(2024年2月16日)、東北大学史料館(2024年4月1日)。