ろんだん佐賀

ダイバーシティと女性活躍

2020.08.24

「個々活躍」推進が未来を築く

「202030」(にいまるにいまるさんまる)をかけ声に多くの企業が取り組んできた女性活躍推進。正確には「2020年までに指導的立場に占める女性が占める割合が少なくとも30%程度」という2003年明記の政府目標である。2020年も残り3分の1、達成は絶望的であり、政府はこれに代わる新目標を策定中だ。

日本におけるダイバーシティは女性活躍に焦点が当たることが多く、実際、私の仕事もその7割が女性関連である。ダイバーシティの本質は「性別・人種・性的指向・年齢等の表層的な違いや経験・価値観等の深層的な違い」であり、ダイバーシティを推進するとは、いわゆるマイノリティ(少数派)とされる人たちが自身の力をいかんなく発揮できる職場を目指すことだが、「女性」はマイノリティの中のマジョリティ(多数派)であり、当面の間はこのバランスが続くと思っている。今日は女性活躍について、男女共同の歴史とともに考えてみたい。

鎌倉幕府が成立した中世は、農家中心であり、そこでは夫も妻も高齢者も子供も農作業に従事していた。土地を管理する武士の夫婦は、財産を互いに持ち寄り共同で土地を支配していた。男女共同参画といわなくても、多くの女性は生産活動に従事していたのである。

それから高度成長期に入ると、日本は工業中心となり、終身雇用制度の中で雇用者が朝から晩まで働き続けるというシステムが一般化した。その中で終戦後10年も経ずに、他国から「東洋の奇跡」といわれる驚愕の復興を遂げ、今でも高い経済・教育レベルを持続している。現代の私たちが不自由なく生活ができているのは紛れもなく、「男が外で率先して外で働き、女が内で従属的役割を果たした」時代のお陰なのだ。

21世紀に入ると、少子高齢化社会が到来する。働き手が少なくなる中で、質の高い労働力を確保するために女性を労働者として迎え入れたいと思うのは自明の理であり、冒頭の「2020230」が誕生した。組織は数値目標を掲げ、女性の採用・登用に積極的に取り組むのだが、現場の働き方は、高度成長期の男性を想定した組織文化や管理制度のままだった。ここに大きなミスマッチがあり、出産などライフステージが複雑な女性には当然馴染まない。そのため、育児中の女性は管理職などの高い地位に就くことができないし、出産を機にパートタイムとなる女性も多い。それはダイレクトに男女の賃金格差に結び付いていった。

そして現代、ウィズコロナ。良くも悪くも大きな変革期がやってきた。私たちはみんなで一緒になって協力し合いながら未来を築いていかなければならなくなった。テレワークが普及し従来の働き方が当たり前ではなくなってきた。家族と一緒に過ごす時間を大切にしたいと思う男性も増えた。焦点は「女性」だけではなく「個々」に確実にシフトしている。その変化を見落とさず、あらゆる支援や柔軟な働き方を提示していく必要がある。「個々活躍」を真摯に推進するその先にはきっと、「女性初の〇〇!」といううたい文句がなくなり「イクメン」や「ワーキングマザー」という言葉が死語になる未来が待っている。そんな未来が早くればいい。私はその未来にこそ、女性が単なる数合わせではなく真に活躍できる社会があるのだと思っている。

 

2020年8月23日付の佐賀新聞 掲載

 

 

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